ハラルフードはヘルシー? ダイエット向け? 

イスラム教徒向け食べ物についてのあり得ない記事

発端は、旧知の編集さんからの電話でした。

編集者「砂崎さん、東大のイスラム学科卒ですよね。今ムスリム向けの食品ハラルフードが人気だそうなんで、その記事書いてくれませんか?」
砂崎「え、ハラルフード、人気なんですか?」
編集者「ヘルシーでダイエットにもいいって…**新聞さんの記事なんですが」。
砂崎「ええッ、ハラルフードがヘルシーでダイエットにいい?!それ、大ウソですけど、**新聞が?!」

そのあと当該記事を読み、さらにググってみてビックリです。ヘルシー、ダイエット向きだけでなく、ベジタリアン料理だの、厳選素材だの、アレルギーに安心だの、安全管理がしっかりだの…。不正確どころか危険でさえある内容のサイトが、ぞくぞくと出てくるではありませんか。
イスラムに関するトンデモねたや、ネガティブな偏見にはもはや慣れっこですが、「ポジティブな偏見」まで出てくるとはウンザリです。ハラル認証ビジネスなのか、五輪を控えてのおもてなしブームなのか知りませんが、こと健康に関わるだけに、ウソは止めていただきたいものです。

 

そもそもハラルフードとは

ハラル(ハラール)とは、アラビア語で「合法な(もの・こと)」を意味します。イスラム法の観点から、ムスリム(イスラム教徒)が行ってもいいもの・ことを規定する考え方です。食品の場合、
・アルコールと関わりがない
・ブタに由来する物質が入っていない
・肉の場合、ムスリムが神の名を唱えながら規定どおりのやり方で屠畜したもの
この3つが大原則です。(細かく言えばキリがないので、この稿では大原則のみに絞ります)。
つまりハラルフードとは、イスラム法の食事規定を満たした食品です。それ以上でもそれ以下でもありません。

もちろん、ハラルフードであり同時にヘルシー/ダイエット向け、という料理は存在します。しかし、ハラルだからヘルシー、ハラルだからダイエットにいい、ということは絶対にありません。ハラルとは、健康やダイエットとは別の次元の概念、ムスリムが神に対して自己の行動を問うときの指標なのです。

 

ハラルフードはヘルシーなの?

ネット上では、ハラルフードがヘルシーである理由として、「厳選素材で作られているから」「出汁や成分までチェックしているから」「イスラム法の作法に従って処理されているから」「流通過程まで調べているから安全管理がしっかりしている」という理由が見受けられました。これらは皆、ポイントを外しています。

「素材を厳選する」のは、ブタ・アルコール由来の食品を避けてそれ以外の素材を選んでいるからです。「出汁や成分までチェックする」のは、しょうゆやみりん、ゼラチンなど、これまたブタ・アルコール由来のものが混じっていないか見ているからです。「イスラム法の作法に従った処理」とは、ムスリムが屠畜しているか云々なので、ヘルシーとは別物です。「流通過程まで調べる」のもブタ・アルコールのチェック、したがって安全管理とは別次元の観点からの調査です。

日本人の目から見てヘルシーか否かは、菌など有害物で汚染されていないか、栄養のバランスがとれているか、カロリー過多でないか、といった要素で決まるでしょう。これらの要素と、ハラルか否かは無関係です。実際、とある日本の精肉企業がハラル認証を取ろうとして、消毒に使うアルコールもダメだと言われ、「これでは衛生水準を保てない」と断念した例があります。対照的に、テレビのドキュメンタリー番組などで中央アジアの遊牧民がヒツジを殺し、調理する場面が見られることがありますね、あれはハラルです。頸動脈のひと切りで屠畜していますし、神の名を唱えていますから。ナイフを消毒しているか、地面に直置きしていないかなどは関係ありません。
これらのことから、ハラルだからヘルシー、とは言えないことがわかるかと思います。特に衛生面に関しては、日本を上回るレベルの国は(イスラム・非イスラムを問わず)そうそうありません。外国へ行って食事するときは、信頼できる店かどうか、食材に火がよく通っているかなどに、重々注意されることをお勧めします。

 

ハラルフードはダイエットにいい?

上記のとおり、ハラルフードの主要ポイントはブタ・アルコール・屠畜の方法です。カロリーが低いかどうかとは無関係です。また中東の、日本人が立ち入れるような国々へ行ってみれば、日本人レベルでなく肥満した人々を大勢目にすることと思います。これは肥満を豊かさの象徴とする価値観やスポーツをたしなまない生活習慣のためでもありますが、カロリー・糖分過多の食生活も無縁ではありません。特に砂糖に関しては、伝統的に薬とされてきたことや酒を飲まないぶん甘味を摂る文化のせいで、きわめて甘いスウィーツが浸透しています。ハラル=ダイエットにいい、と思い込まず、カロリーチェックや腹八分目を心がけるべきでしょう。

 

ハラルフードはベジタリアン料理?

ハラルフードは野菜がたっぷりとか、欧米ではベジタリアン料理として知られている、という文言が、ネット上に散見されました。これも勘違いです。イスラム法の規定どおりに処理されたウシ、ラクダ、ニワトリ、七面鳥、ヒツジといった肉類は、きわめて一般的なハラルフードです。貧しい地域が多いので、肉を入手できず野菜を食べているという事例は聞きますが、これを「ハラルだから野菜たっぷり!」と考えるおめでたい方はいないでしょう。

また、ハラルフード=ベジタリアン料理でもありません。これは中東料理のひとつレバノン料理に、菜食メニューが多いことから来た誤解かと思われます。レバノンはムスリムがマジョリティの中東には珍しく、東方教会系のキリスト教徒が人口の約40%を占める国で、彼らの宗教的慣習からベジタリアン料理が発達しました。そのためレバノン系移民が多い欧米では、「レバノン料理=ベジタリアン・メニューが多い」と認識されています。しかしレバノン料理は、肉を禁じている料理ではありません!肉メニューもたくさんあります。肉アレルギーの方、レバノン料理だから/ハラルフードだからと言って、安心しないでくださいね。

※「レバノン料理はハラルフードですか」という問いに対しては、かなりの確率でYESと答えられます。レバノンの人口の55%はムスリムなので、ハラル規定を満たした料理が主流です。

 

ハラルフードはアレルギーがある人にやさしい?

冒頭で編集者さんに教えられた某大手新聞の記事、読んで最も衝撃的だったのが、「ハラルフードはアレルギーの人にもいい」というくだりです。もちろんレトリックをくだくだ使って、断定はしない書き方にしていました。それを読んだ読者が「ハラルフードを食べてショック症状が出た!どうしてくれる!」と訴えても、「『安全だ』と断言はしておりません」と言い逃れができるでしょう。しかし小見出しでも「アレルギー」「やさしい」などと謳い、「食べても大丈夫」感をたっぷり醸し出していました。まさしく印象操作です。これで健康被害が出たらどうするつもりなのでしょう。

繰り返しますが、ハラルフードか否かを決める主要ポイントは
・アルコール
・ブタ
・屠畜手順
です。「アレルゲンの除去」という観点はありません。小麦、卵、乳、チーズ、クリーム、ゴマは、ハラルフードの大人気食材です。前項で触れたように肉料理もたくさんあります。
これらにアレルギーのある方は、くれぐれもメディアに誤魔化されず、アレルゲンを確認してください

ネットでは「牛乳・卵アレルギーの方も安心の米発酵アイス!ハラルフードです」という広告を見かけました。当然ながらこれは、お米のアイスだから牛乳・卵を使っていないだけです。ハラルフードだからアレルゲン除去食なのではありません。「ハラルフードは使う素材が一般の料理より少ないから、そのぶんアレルギーの危険も低い」という表現も見かけました。ハラルフードに使われる食材が日本の一般の料理より少ないのは、ブタ・アルコール由来の素材を除いているだけです。ですから「ハラルフードなのでアレルギーの危険性が低い」が当てはまるのは、ブタ・アルコールがアレルゲンの方だけです。

もう1例を挙げましょう。こちら、カタール航空のサイトをぜひ見てください。
カタールは厳格なイスラム教徒が多い湾岸の国で、当然「機内で提供するお食事はすべてハラル」です。それでも、「いかなるアレルギー反応の発症にも責任を負いかねます」とガッチリ明記しています。ハラルフード=アレルゲン除去食、でないことは、これでよくわかると思います。

 

ハラルフードは添加物がない?/ハラルフードはオーガニック?

「これオーガニックだから大丈夫だよ」と、ムスリムの人にお菓子をあげている日本人を見たことがあります。しかし、オーガニックだからハラルフードという訳ではありませんし、ハラルフードだからオーガニックでもありません。どうも「ハラルフードはより自然」という偏見があるようですね。「乳化剤を使っていないからハラルフードはよりナチュラル」とか、「ムスリムにとっていい物は日本人にもいい」という言説も見かけます。どれも的外れです。

しつこいですが、ハラルフードのメイン基準はブタ・アルコール・屠畜基準です。それ以上でもそれ以下でもありません。

そもそも、オーガニックだの無添加だのナチュラルだのが体にいいかどうかも問題ですが、ここではハラルという点からだけ見てみましょう。ハラル認証では確かに添加物を念入りにチェックします。しかしそれは、ブタ・アルコール由来の成分を見ているだけです。乳化剤は原則忌避されます。でもそれは動物由来の乳化剤の場合、ブタ系である恐れが高いからで、植物由来ならOKとされます。添加物を減らそうとしている訳ではないのです。

また、オーガニックかナチュラルかという問題ですが、日本人の一般的なイメージでは、農薬を使わず有機的な肥料で栽培したものがオーガニックでナチュラルでしょう。しかしハラルの観点では、農薬・肥料にブタ・アルコール成分があるか否かが問題です。自然派農法をしている農家さんが、飼っているブタの糞を肥料に使ったりしたらバツですね。つまり、オーガニックとハラルもまた別物だということです。

「ムスリムにとって安心なら日本人にも安心」という言い方もマカ不思議です。日本人の皆さん、アルコール除菌「していない」と知って、安心しますか?この肉はムスリムが屠畜していると聞いて、「なら少し高くても買うわ」と思いますか?ハラルはムスリムの方の心の問題なのです。非ムスリムにとってメリットはありません。いやむしろ、非イスラム国家である日本でわざわざハラル認証を取得するぶん、コストがかさみ店頭価格は割高となっているでしょう。だからデメリットがあると言うべきかもしれません。

こう言うと「いや、ハラルは清潔を重視する!非ムスリムにとっても清潔はメリットだろう」などと反論する方がいますが、イスラム法が規定する「清潔」と日本人の感じる「清潔」は、アルコール除菌の件でもわかるとおり、異なります。「あなたにいいものは私にもいい」という「人類みな同じ!」的発想で臨むより、「あなたと私は違い、それによって利害も異なります。どこまで譲り合えますか」という態度で接した方が、長い付き合いができるかと思います。

幸い、この点は来日されるムスリムの方のほうがよくご存じです。「日本が非イスラム国家であることは承知で来ましたから」と言い、自分なりの「ハラル基準」を心に持っている方がほとんどです。もともとイスラムという宗教自体、地域差・個人差が実に大きいのです。「ブタ、食べます」という人も(稀ですが)いますし、反対にとても敬虔で「日本滞在中も、国から持参したハラルフードしか食べません」という人もいます(自国・自派のハラル認証しか信頼しないという意味ですね)。ムスリムを十把ひとからげにして、「ハラルフードを提供しなくては!」と慌てふためくより、「食べられないものはありますか?」と訊いてその人その人に合わせた方がいいと、砂崎の経験上は思います。

 

正の偏見も負の偏見もお断り!

さて、ハラルフードのせっかくの「よい評判」を、ひとつひとつ打ち壊してまいりました。「どうして?イスラムが嫌いなの?」と思われましたか?いえいえ、そんなことはありません。と言うより、「イスラムだから好き」とか「嫌い」とか語るには、多様すぎるのですイスラムは。昨今、ハラル認証ビジネスがお元気ですが、それを利用した飲食産業・ホテル産業の方は、「حلال‎ 付いた証明書ゲットだぜ!」と喜ぶより、「酒類は提供していますが、食器・シンク・洗うスポンジを分けています」とか、「弊社が取得したハラル認証は**国の**団体が出したものです。消毒のアルコールは許容するとされています」、「豚肉は使っていませんが、この牛の屠殺に当たりムスリムが神の名を唱えているかはわかりません」など、獲得した認証の中身を語れるようにしておいた方がよいと思います。後は聞いたムスリムが判断するでしょう―本当に千差万別ですよ、イスラムは。

まあこの辺りは、我ら日本人だって「仏教徒だから仏さま拝みたいでしょう?お仏像用意しておきましたよ」と言われチベット仏像を差し出されたら、(いや、これ、違う)と思うでしょう。それをイメージしてもらえればよろしいかと。

後ですね、ハラルフードだからムスリムだからと持ちあげる風潮もいかがかと思います。イスラムへのひどい偏見があるのは承知の上です。だからと言って、イスラムやハラルフードを過大評価すれば「リベラル」「ポリコレ」になる訳ではないでしょう。偏見は、ネガティブであれポジティブであれ偏見なのです。ブームを作ってしまおうとする雰囲気、ハラル認証ビジネス業界の煽りめいた空気も感じます。

述べてきたとおり、ハラルフードはムスリムの視点からジャッジされた信仰の指標であり、それ以上でもそれ以下でもありません。ハラルだからヘルシー、ハラルだから衛生的、ハラルだからダイエット向き、ハラルだからベジタリアン食、ハラルだからアレルギー対応、ハラルだから無添加、ハラルだから安全、ハラルだからオーガニック、…。どれも「ハラルとは何か」を知っていたら言えないことばかりです。「ハラルだから」という前提から導けるのは、「イスラム法に照らして合法である」ということだけです。

不当なアゲもサゲも不要です。どんな国の料理も衛生的な品をバランスよく、適量食べれば基本ヘルシーで安全ですし、あなたの好み・体質に合えばおいしいでしょう。ハラルフードもそうです。ふつうに食べてみて、気に入ったら食卓の常連にしてあげてください。ハラルフード=非ムスリムが食べてはいけない食品、ではありませんから。砂崎の好物は豆ペーストのホンモス、やや酸っぱいサラダであるタッブーリ、塩味のヨーグルト、お菓子のマウムールです。特にマウムールは、レバノン大使館に伺ったおり砂崎があまりにおいしがったもので、大使がひと箱お土産にくださったほどで…。うう、また食べたくなってきました!

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キャリアウーマンの着物 超短時間で着付けるテクニック

仕事で着物を着るようになって3年が経ちます。

「着物の人」というキャラで覚えていただけたり、話のきっかけになったりする点がいいですね。特に外国の方にお会いするときは、SNS映えするので非常に喜ばれ、「写真写真!」と大いに盛りあがったりします。一方で困るのが、着付けにかかる時間。それで今日は、砂崎がやっている時間短縮のくふうをお話しします。

まずお断りしておくのが、以下の着付けは「着物でありさえすればいい」というシチュエイション向けのものであることです。公式の場の着付けに関しては、専門の方がそういうサイト・本をものしていらっしゃいますから、そちらの方をご参照ください。

 【超短時間着付けのコツ】

その1

体型補整をしない。胸パットお尻パット、おなかにタオル巻きなどいろいろありますが、すべて省略します。なくて大丈夫です。

 

その2

下着はロングキャミ(ロングスリップ)で十分。ついでに言うと、洗う手間もぐっと楽です。ブラは、胸のある方はつかった方がいいかもしれませんが、袷なら省略可能です。

 

その3

襟芯は入れましょう。帯板もそうですが、仕上がりをカッチリ決めてくれます。半襟が既成で縫い付けられている簡易じゅばん、ゴム付き帯板があると、時間短縮できます。

 

その4

襟抜きはしない。これをやり出すと、ついつい引っぱったり整えたりしたくなり、時間がかかります。また、仕事で着る場合荷物が多いので、ショルダーバッグで持ち歩いたりしているうちに元のモクアミに結局なります。襟にこだわらず、さっと着てしまいましょう。

 

その5

帯は半幅帯の一文字結びが最強! とにかくグルグル巻くだけ、その上から帯締めを締めれば緩んだり崩れたりもありません。羽織を脱がなければお太鼓と誤魔化せます!

 

その6

足袋は靴下タイプが最短で履けます。白に近い靴下足袋を見つけたら買っておきましょう。

 

その7

髪は和風柄の大きいクリップがオススメ! ゴムで束ねて挟むだけ、10秒です。

 

仕上がりはこんな感じ

さて、以下の画像が上記のテクを駆使した砂崎の着付けです。メイク・髪も込みで所要時間は10分強。ほぼ1日出かけて帰宅してから撮った写真ですが、出先で崩れ直しはしていません。

 

 

 

 

 

 

着物って、ゆっくり楽しみながら着て、特別なオシャレ感を楽しむのには最適なアイテムですが、ビジネスライクに着ることもできます。あ、そうそう、タスキ大判ハンカチを持参すれば、何か作業が必要になったときも問題なしですよ。

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